伊藤まさひろ世事感懐

東京オリンピック開催延期

2020東京オリンピック・パラリンピックの開催が1年程度、延期になりました。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、IOC(国際オリンピック委員会)が決定しました。これに先駆けて、安倍首相はIOCのバッハ会長と会談し、延期の意向を伝えたということです。出場選手や観客の健康を守るためにも止むを得ない措置だと思います。

新型コロナウイルスは瞬く間に世界中に広がり、WHO(世界保健機構)はパンデミック(世界的大流行)が拡大していると警告を鳴らしています。3月26日現在で感染者数は46万人を突破し、2万834人が死亡、2009年の新型インフルエンザ大流行による死者数を超えました。各国首脳は新型コロナウイルスとの戦いを戦争にたとえ、感染拡大阻止に躍起となっています。

そのような状況の中で2020東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まりました。これに伴って、様々な問題が持ち上がっています。一つは出場を目指してきた選手のコンデション調整です。オリンピックでメダル獲得を狙う超一流選手のコンデション管理は大変難しく、試合当日に体調をピークに持っていくために、大会前から長期にわたっての調整が必要です。大会の1年延期で、練習スケジュールを作り直さなければならなくなった選手がほとんどだと思います。この他、募集したボランティアの処遇、経費の追加負担など課題が山積しています。

会場問題は本県にも重くのしかかっています。千葉市の幕張メッセではフェンシングやテコンドー、レスリングなど7競技が予定され、その期間に幕張メッセでの展示会開催を考えていた約370社の利用を断ったり、他の期間に移してもらったそうです。それがいきなり空白に。加えて、来年の会場確保も難題です。来年、延期されたオリンピックの開催が予想される時期に展示会開催を予定している企業・団体も多く、これらの企業・団体との調整が新たな課題として持ち上がっています。

オリンピックが延期になったのは初めてで、中止になったのは夏と冬の大会でこれまで5回あるそうです。いずれも戦争が理由で、このうちの2回がなんと日本での開催予定でした。1940年に東京での夏季オリンピックが予定されていましたが、日中戦争の勃発で開催を返上、その後、代替地となったヘルシンキ大会は戦況の悪化で中止になりました。当時、冬季大会も同じ国で同時に開催されていて、予定されていた札幌での冬季オリンピックも中止になりました。

日本が参加を取り止めた大会もありました。1980年のモスクワオリンピックでは、ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議した西側諸国が参加をボイコット、日本もこれに同調して参加を取り止めました。オリンピック出場の機会を奪われた瀬古俊彦選手らの悲痛な叫びがいまだに耳に残っています。

今回の決定は懸念されていた開催中止でないだけ、まだ救いがあります。テレビでのお茶の間観戦を予定していた私たちは、オリンピック開幕を楽しみにできる期間が1年間増えたと前向きに捉え、まずは新型コロナウイルスの感染封じ込めへの協力に全力を注ぎましょう。