伊藤まさひろ世事感懐

控えよう不要不急の救急車利用

昨年9、10月2カ月間、救急車で病院に運ばれた県内の患者のうち、重症が全体の約7%、中等症が約42%、残りの約49%が軽症だったということです。わが党の同僚県議、佐野彰議員の12月議会の一般質問に対する県担当者の答弁で明らかになりました。突然の病気や怪我で、自ら病院に行けなくなった患者にとって、救急車は命の綱です。しかしながら、利用者の約半数が特に救急車を呼ぶ必要がない軽症患者だったというこの調査結果は、今後の救急医療対策に大きな課題を投げかけました。

軽症患者の搬送に救急車がとられて、一刻も早く病院に運ばなくてはならない重症患者のもとへ救急車が到着するのが遅れるのが最大の問題です。119番による救急搬送の依頼は年々、増え続けています。今回の調査でも期間中の救急搬送件数は4万4042件で、2年前の2013年の調査より約2200件増えたということです。当然、救急隊員は多忙を極め、次々と入ってくる救急搬送依頼に、救急車が出ずっぱりということも珍しくないそうです。

救急搬送の依頼の中には「救急車の乱用」と見られるケースも少なくなく、病院の待合室で長い間待つのが面倒なので救急車を呼んだり、虫歯の治療に救急車を利用したなどの事例も見られるそうです。救急車を病院までのタクシー代わりに利用するなどの乱用は以前から指摘されていて、この問題を解消するために救急車利用の有料化が財政制度等審議会などで検討されています。

外国では、救急車利用の有料制度を採用しているところも少なくなく、アメリカのニューヨークでは消防署の救急車を利用すると約5万円かかるそうです。ドイツのミュンヘンでも有料化が採用され手織り、シンガポールでは救急でない場合、有料とされるそうです。ただ、救急車の利用が有料になると、救急車を呼ぶのにためらいが生じ、治療が手遅れになる可能性も考えられます。足腰が弱い高齢者などの社会弱者への配慮も必要です。有料制の採用は慎重にすべきです。

そこで、佐野県議は一般質問のなかで、東京都や山形県などで採用されている救急電話相談制度の導入を提言しました。東京都の場合は東京消防庁に救急相談センターが設けられ、救急車を呼ぼうかどうか迷っている人は♯7119に電話をかけると担当者が相談に乗ってくれ、救急性が高いと判断されると、すぐに救急車の出動が整えられるシステムです。この提言に対し、保健医療担当部長は東京都の事業を検証し、消防機関などと相談して前向きに検討したいと答弁しました。

全国の消防関連の予算は約2兆円。この予算を有意義に利用するためにも、私たち一人ひとりが救急車の利用方法をもう一度考える必要がありそうです。