伊藤まさひろ世事感懐

体力と運動能力

2020年の東京オリンピック・パラリンピックまであと数年。メーンスタジアムの国立競技場のデザインも決まり、間もなく着工が予定されています。その他の競技場も次々と整備に着手されるでしょう。過去には、競技施設の完成が開幕まで間に合うか心配されたオリンピックも多いように記憶しています。実際に、一部の工事が完了しないまま見切り開幕したオリンピックもあったようですが、几帳面な日本人のこと、すべての競技施設がオリンピック開幕まで立派に完成していることと思います。

オリンピックを目指して競技力の向上にも取り組まれています。開幕までおよそ4年半、選手年齢が総じて低い水泳などは、現在の中学生や高校生が主力になると思いますが、果たして金の卵が現れるでしょうか。

トップ選手の競技力強化ももちろんですが、国民へのスポーツ普及、それに伴う健康増進もオリンピックの大切な目的の一つです。最近、スポーツ庁が興味深い調査結果を発表しました。各年代の体力・運動能力を調べた調査で、50歳以上の体力・運動能力が向上し、75~79歳では過去最高を記録したということです。老いてますます盛んな高齢者の姿が目に見えるようです。

実際、平日のゴルフ場ではシルバー世代の姿が目立ちます。テニスクラブでは、65歳あたりはまだ「若手」と言われるそうです。このほか、スイミングクラブなどの施設で継続的にスポーツに取り組む高齢者をたくさん見かけます。

65歳から79歳までの高齢者では、日常生活で必要な動作とスポーツ・運動習慣の関係の調査も合わせて行われました。「何にもつかまらないで立ったままズボンやスカートがはけるか」の質問には、スポーツや運動を「ほとんど毎日(週3~4日以上)」行っている男性の85%、女性の82%が「できる」と回答。一方、スポーツをしない人では男性69%、女性67%にとどまったそうです。また、運動を「ほとんど毎日」実施する75~79歳は、そうでない人に比べて10メートル障害物歩行の記録が良かったということです。

かくしゃくとした高齢者に比べ、気がかりなのは6~19歳の青少年の調査結果です。ほとんどの年代で体力・運動能力が緩やかに向上しましたが、1985年ごろのピーク時に比べると依然として低い水準にとどまりました。青少年に明日の日本を支える体力をつけてもらうために、学校教育や社会教育の工夫が必要です。