伊藤まさひろ世事感懐

財政難

富津市が深刻な財政難に陥り、このままでは2018年度には財政再生団体に転落するというショッキング見通しが明らかになりました。市の預金である財政調整基金はほとんど底をつき、来年度決算では実質収支が赤字になり、18年度には財政が破綻するというのです。

財政難の要因は、長く続いた不況による税収低迷と人件費や福祉費の増大です。富津市では1999年度に「財政非常事態宣言」を出し、行財政改革に取り組んできましたが、財政悪化にブレーキをかけるまでに至りませんでした。

財政再生団体とは、財政赤字の比率が一定の基準を超え、地方財政健全化法に基づいて指定された自治体のことです。再生団体に指定された自治体は再生計画を作成し、国の管理下で借金返済、財政再建を目指すことになります。

旧法の再建法によって財政再建団体に指定されたのが北海道の夕張市です(現在は財政再生団体)。2007年に353億円の赤字を出し、破綻状態と判断されました。石炭産業の衰退に伴って人口が急減した一方で、積極的な観光地化策が裏目に出たことが原因です。再建団体指定後、市民税、固定資産税、軽自動車税、下水道使用料などが軒並み引き上げられ、ごみ処理は一律有料化、図書館廃止などが決まりました。財政再生団体に指定されると「最高の負担、最低の住民サービス」が市民に求められるのです。

さらに再生団体は地方自治を行うことができなくなります。予算編成はそのたびに国に相談しなければならず、自治体による主体的な施策はできなくなります。富津市は市税の徴収強化、人件費の節減、民間委託の推進などで破綻を食い止めたいとしていますが、市民に多大な犠牲を強いる再生団体転落だけはなんとか回避して欲しいものです。

この富津市の問題は同市だけにとどまるものではありません。ある調査によると、基準となる収入額を支出額で割った県内市町村の財政力指数は浦安市、成田市、袖ヶ浦市などが収支均衡の1・0を超え、財政が堅調の一方で0・5を割りこんだ市町も多く見られます。再生団体に転落という最悪の結果にならないように、これらの自治体は財政健全化へ懸命な努力をして欲しいと思います。