伊藤まさひろ世事感懐

貧困にあえぐ子どもたち

我が国の子どもの貧困率が過去最悪を更新したということです。厚生労働省の国民生活基礎調査によりますと、平均的な所得の半分以下で暮らす17歳以下の子どもの割合は16.3%になりました。実に6人に1人が経済的に恵まれない環境の中で暮らしているということになります。

ユニセフの子どもの貧困率に係わる統計では、2009年時点で経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国中、日本は10番目に悪い数字で、OECD加盟の先進国中、米国についで2番目の低レベルでした。米国は「機会は平等。アメリカンドリームを実現するかどうかは、個人の努力次第」と考える国で、社会保障を政策の重要な柱とする他の先進国とは若干、色合いが異なります。このため、日本の貧困率はこれら先進国中で最悪といってもいいのです。

給食が命綱で、夏休みなど長期の休みになるとやせてしまう。病気になっても医者に診てもらえない。下着をはいてこない―など、貧困の中で暮らす子どもの痛々しい様子が学校現場から報告されています。

貧困は児童の心にも暗い影を投げかけています。文部科学省が発表した2011年以降に自殺した児童生徒約500人の実態調査によりますと、経済的困難で将来を悲観した自殺が5%で、いじめによる自殺(2%)より多いことが分かりました。

親の失業、給料カット、離婚による1人親家庭の増加などが貧困児童を生んでいます。児童に責任は無いのです。児童憲章で「すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される」と定められています。社会全体で、貧困児童に夢と希望を与えなければなりません。

貧しい家庭に生まれた子どもの教育や生活を支援するため、政府が定める「子供の貧困対策に関する大綱」の原案がまとまりつつあります。未来の日本を担う若者を育てるためにも、実効ある取り組みをぜひとも打ち出していただきたいと思います。