伊藤まさひろ世事感懐

少子化、危機レベルに

15歳未満の子どもの数が1950年以降の統計で最も少なくなりました。以前から少子化対策が叫ばれ、さまざまな対策が施されていますが、残念ながらその効果は今のところ表れていません。

総務省がこのほど発表した15歳未満の子どもの推計人口は前年に比べて15万人少ない1649万人で、32年連続の減少となりました。総人口に占める割合は12.9%。これは米国(19.6%)、中国(16.5%)、ドイツ(13.2%)などを下回り、人口4000万人以上の主要国では最低だそうです。日本の少子化は既に危機レベルなのです

少子化が国の将来に暗い影を落とすことはご存知かと思います。分かりやすいのが経済的な影響です。子どもの数が減り、ひいては将来の労働者人口が減ることで、日本のGDPは減少に向かうとされています。日本の経済活力が衰退すると懸念されているのです。

決定的なダメージを受けるのが年金を始めとする社会保障制度です。現在の公的年金システムは労働者が支払う掛け金を、受給者で配分する方式です。受給者を支える労働人口が減れば、公的年金システムは立ち行かなくなります。ちなみに1995年には5人で1人の受給者を支えていましたが、2020年には2.3人で1人の受給者を支えなければならなくなるといわれています。

保育サービスの充実、児童手当の支給、育児休暇の取得促進など、さまざまな手が打たれていますが、少子化の流れは止まりません。かくなるうえは、たとえば結婚という形にとらわれないなどの抜本的な対策が必要です。

かつて、同じように少子化に陥りながら、出生率を回復させた諸外国の取り組みを見てみましょう。1980年から出生率が急激に下がったフランスでは、女性の勤労と育児を可能とする保育ママ制度や、子どもが多いほど税金が安くなる制度の導入、結婚していない事実婚カップルやシングルマザーであっても普通の家族同様の手当てを受けられるなどの対策を採ってきました。スウェーデンでは休業中でもそれまでの8割の所得を保証する充実した育児休業制度、勤務時間短縮制度、事実婚・同棲制度、婚外子と嫡出子を法的に同等に扱うなどの対策で、出生率を持ち直させました。

フランスの家族政策への財政支出は、日本の5倍近くになるそうです。財政事情は厳しいのですが、家族政策の支出は「国の将来を見据えた投資」とみなされて国民の支持を得ているそうです。わが国でも諸外国の例を参考に、思い切った少子化対策を実行に移し、女性が安心して子どもを産み、育てることができる社会を実現するべきです。