伊藤まさひろ世事感懐

超高齢化社会と年金問題

厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の発表によると、およそ50年後の日本の人口は今より3割減の8674万人になり、平均寿命の伸びもあいまって、総人口の4割が65歳以上の高齢者になるということです。今でさえ年金制度の行く末が懸念されていますが、さらに状況が悪化し、現役世代1・3人が高齢者1人を支えていかなければならない時代がすぐそこまで迫ってきているのです。

国連の定義によると、65歳以上の人の総人口に占める割合が21%を超える社会を超高齢化社会と呼ぶそうです。日本は平成22年に22・5%になり、すでに超高齢化社会に突入していました。その超高齢化現象がさらに進み、2060年には39・9%にもなるというのです。

少子高齢化の進展はわが国の未来にとって大変な難問です。生産年齢人口が減少することで、工場は労働力を求めて海外に移転し、産業の空洞化が極端に進むでしょう。農業の担い手はますます不足し、国力を示す国民総生産にも悪影響を及ぼします。このように懸念される点は数多くありますが、当面の課題は年金問題です。年金を現役世代の拠出金でまかなう従来のシステムの転換は待ったなしなのです。

年金制度改革を2009年の衆院選マニフェストに掲げた民主党ですが、その目玉である最低補償年金の実現が危うくなっています。民主党の試算によると、月額7万円の最低補償年金を実現するには2075年度で最大25兆円が必要になり、消費税率10%への引き上げとは別に新たに最大7%の増税が必要になるということです。

増税への国民の反発を恐れて、試算結果の公表を民主党はいったん見送ることを決めましたが、野党の反発で、10日に一転して公表に踏み切りました。さらに、岡田副総理は年金抜本改革の撤回を衆院予算委員会で示唆しました。最低保証年金の創設を軸にした年金抜本改革は民主党のマニフェストで掲げられた重要政策であったはずです。内閣の方針や政権党の施策がこうもころころと変更されて果たしていいのでしょうか。