伊藤まさひろ世事感懐

自転車の歩道走行禁止

自転車の歩道走行を原則禁止する方針が打ち出されました。警察庁は代わって、自転車走行レーンの整備などを進めるとしていますが、どこまで整備されるかはなはだ疑問で、自転車と自動車の事故増加が心配されます。

自転車通行可の標識がある歩道は全体の46%を占めるそうです。その他の道路も事実上、自転車の通行が容認されてきました。すっかり定着してきた歩道走行ですが、歩行者との衝突事故が後を絶たないことから、自転車を歩道から締め出すことになりました。警察庁の方針では、3メートル未満の歩道について自転車の走行を原則禁止。ただし、幼児やお年寄りは除外し、車の交通量が多く車道走行が危険な場合なども例外とするらしいです。

たしかに、一部の自転車のマナーの悪さに怒りを覚えることもありました。スピードを出して歩道を走行したり、走行の邪魔となる歩行者に罵声を浴びせる悪質な者もいました。最近ではブレーキを前後輪に装着していない、ピストと呼ばれる競技用自転車を街中で乗っている者も増えているそうです。

歩行者にとっては歓迎すべき決定ですが、代わって、車道に追いやられた自転車と自動車の事故増加が懸念されます。追い越す大型トラックが巻き起こす風で、自転車がトラックのほうにふらつくのを経験した人が多いと思います。道路に駐停車している自動車も自転車の車道走行の障害となります。これをよけるために大きく道路中央に膨らむ自転車はとても危険な存在です。

警察庁は自転車の車道通行に伴って、自転車レーンや縁石などで仕切られた自転車通行帯の設置を進めるそうです。といっても、広い歩道を設けることができない道路は当然、車道も狭く、自転車レーンを設けるスペースがないでしょう。また、商品の積み下ろしで自動車を停車させる必要がある商店の反対も予想されます。

どの歩道を自転車通行禁止の対象とするかは交通事情に応じて各警察本部が判断するということですが、自転車と自動車の事故増加を防ぐためにも、慎重な判断が求められます。事故防止のために自転車走行を免許制にし、定期的に安全教育をするのも手です。自転車にバックミラーや方向指示器の備え付けを義務化するのもいいでしょう。

ドイツ・フランクフルトでは市内全道路250キロのうち、高速道路などを除く9割以上の道路で、自転車レーンや自転車専用通路が整備されているそうです。自転車は庶民の足として欠かせないものです。それを原則車道走行とするならば、このような思い切った道路整備がぜひとも必要です。