伊藤まさひろ世事感懐

東京湾内でも安心できない津波被害

東日本大震災では、地震そのものによる被害も相当のものでしたが、引き続いて沿岸部を襲った津波が多くの人命を奪い、街を破壊し尽しました。千葉県外房にも襲来し、旭市飯岡には最大7・6メートルの津波が押し寄せ、大きな被害をもたらしました。津波は東京湾沿いの内房にも到達しました。木更津市では2・83メートル、船橋市では2・4メートルの津波が観測されたということです。

東北の三陸海岸が昔から津波に苦しんできたのは、山が海に切れ込み、奥に行くほど海が狭くなるリアス式海岸の地形が原因というのは多くの人が知っています。襲来した津波は湾奥部に進むほど高さを増し、湾最奥部に到達する頃には、巨大な津波へと変貌します。

これに対して東京湾は入り口が狭く、奥に行くほど広がっている巾着型のため、これまで津波の心配はほとんどないと言われてきました。実際に、推定マグニチュード8・2という1703年の元禄関東大地震の際には三浦半島で最大8メートルほどに達した津波も、東京湾内では1~2メートルほどだったといわれています。熱海で12メートルもの大津波が観測された関東大震災でも、東京湾内では津波による被害がほとんどなかったようです。これらの資料から、首都圏地震の場合の東京湾の津波の高さは1~1・5メートルとする説がこれまで有力でした。

2006年に行った大地震による津波シミュレーションをもとに、県は銚子市から富津市までの沿岸の津波浸水予測図を作成しましたが、東京湾内では大きい津波は発生しなかった過去の例から、君津市から浦安市までの各地の浸水予測はこれまで行っていませんでした。ところが、今回の東日本大震災で、東京湾内の各地では2㍍を越す津波が観測され、これまでのように「房総半島と三浦半島の自然の堤防に囲まれているから安心」などと、安閑としてはいられなくなりました。

東京23区には津波や高潮に脆弱な海抜ゼロメートル地域が22%を占めるそうです。千葉県でも埋め立て部などで、海抜が低い土地が多く見られます。これらの地域では高潮対策として護岸が作られていますが、地震による液状化で堤防が破損したところに、予想を超えた津波が襲来すれば、被害は甚大なものになります。

東日本大震災では、津波で浸水した県内の土地が23・7平方キロメートルに上りました。もしも東京湾岸に大きな津波が襲ったら、浸水地域は一挙に増えることが予想されます。このため、県ではこれまで作っていなかった東京湾岸の津波浸水予測図を新たに作成することにしました。自分の住む街が、万一の大津波でどの程度浸水するかを知るのは、避難をする上で重要です。東京湾岸地域の実態に即した詳細な予想図の完成が待たれます。