伊藤まさひろ世事感懐

日本の技術で世界一を

国際宇宙ステーションに物資を運ぶ宇宙航空研究開発機構のH2Bロケットが先月22日、宇宙機構種子島宇宙センターから打ち上げられ、15分後に無人補給機「HTV(愛称こうのとり)」2号機を分離して打ち上げに成功しました。

HTVは国際宇宙ステーションにドッキングし、積み込んでいた宇宙飛行士の食料や実験機器など約5・3トンを無事に届けましたが、何よりも注目すべきは、日本のロケットが前身のH2Aと合わせて連続14回、打ち上げに成功したということです。通算でも19回目の成功となり、打ち上げ成功率は95%になりました。

なぜ、成功率が重要な意味を持ってくるかというと、ロケット打ち上げは、国際的に競争が激しい分野だからです。自前の通信衛星や気象衛星などを必要としている国はたくさんあります。それらの国々に代わって衛星を打ち上げるビジネスが、「ロケット先進国」の間で火花を散らしています。厳しい競争の中で衛星打ち上げを受注するには、なんと言っても成功率がカギになります。

この商業ロケットの分野では、これまでのところ、欧州の国々の会社が共同で設立したアリアンスペース社が一歩、先を行っています。1年間に打ち上げられる衛星の約半数が、アリアンロケットで打ち上げられています。米国、ロシアも高い技術水準を前面に打ち出して競い合い、最近では中国の台頭も急ピッチです。

これに対して、日本は韓国航空宇宙研究院から、同国の多目的実用衛星「アリラン3号」を受注しただけにとどまっています。これから巻き返しが期待されるだけに、今回の打ち上げ成功は国際的な評価を得る上で大きな意味を持っています。

話は変わりますが、激しい国際競争が繰り広げられている分野に、スーパーコンピューターの開発があります。いかに計算が速いコンピューターを開発するかの競争で、日本はこの分野で米国や中国と互角に渡り合ってきました。世界一を目指すことで、科学が進歩し、その技術はさまざまな産業に波及します。ロケット技術も然りです。

かつて次世代スーパーコンピューターの開発費が高額すぎるとして、「世界一になる理由は何があるんでしょうか。2番目ではだめなんでしょうか」と言い放った政治家がいて、世間のひんしゅくを買いました。このような声に惑わされず、ロケット打ち上げの分野でも、ぜひとも世界一を目指してほしいものです。