伊藤まさひろ世事感懐

自転車事故を無くそう

交通事故の約2割が自転車によるものということをご存知でしょうか。日本損害保険協会のまとめによりますと、昨年の自転車が関係した事故は10万9269件で、交通事故全体に占める割合は19%でした。これによる死傷者は10万8538人にも達しています。自転車を利用する人は今一度、自転車の法規や安全な乗り方を再確認する必要があります。

自転車事故の8割以上が自動車との事故で、出会い頭による事故が半数以上を占め、次いで右左折時の衝突など、自転車による事故の多くが交差点やその付近で発生しています。原因として安全不確認、一時不停止、信号無視などが目立っています。これから分かるように、事故の原因の多くが、自転車は道交法で規制される車両であるということを自覚せず、漫然と通行していることにありそうです。

インターネットを利用した自転車利用の交通ルール調査では、「夜間のライト点灯」「2人乗り原則禁止」「飲酒運転禁止」などはさすがに80%以上の人が知っていると答えていますが、「歩道通行時は車道寄りを徐行」「歩道でのベル使用不可」のルールとなると、知っている人は半数を割り込んでいます。

問題は自動車と同様に交通標識・標示に従わなければならないことを知っていると答えた人がおよそ3分の2にとどまったことです。逆に言うと、アンケートに答えたおよそ3分の1の人が、交通規則を無視して自転車で通行しているということになります。一時停止せずに狭い道からたくさんの自動車が行き来する広い道に飛び出してくる自転車が頻繁に見られます。自動車や歩行者との出会い頭の事故の多くは、自転車が一時停止の交通ルールを守っていれば防げたかも知れません。

11歳の男子小学生が62歳の女性と衝突し、頭蓋骨を骨折した女性の意識が戻らない状態になった事故で、9521万円の賠償判決が神戸地裁によって出されるなど、自転車による対人事故で、高額の損害賠償金を請求されるケースが増えてきています。県の調査では、アンケートに答えた人の約90%が、このような高額損害賠償判決の事例を知っていましたが、一方で、万一の事故に備えるための自転車保険には約6割が未加入だったということです。

信号無視や酒酔い運転、無謀運転などの危険な行為で3年以内に2回以上、検挙された者に安全講習の受講を義務付ける自転車運転講習制度が6月から始まりました。東京都荒川区などほうぼうの自治体が、自転車運転免許制度を手がけるなど、自転車事故を減らすさまざまな試みが行われています。身近な自転車も交通ルールを守らなければ凶器に変わるということを自覚して、安全通行を心がけましょう。