伊藤まさひろ世事感懐

芸術鑑賞の秋

芸術の秋たけなわとなり、どこの美術館も大勢の入場者で盛況です。その中でもひときわ注目を集めているのが上野の森美術館で開催されているツタンカーメン展。古代エジプトの珠玉の工芸品が展示されている美術館前には長蛇の行列ができ、休日には、昼ごろに当日の入場整理券がすべてなくなるといいます。東京でのツタンカーメン展の開催は47年ぶりですが、ちなみにその時の東京、京都、福岡会場を合計した来場者総数295万人は、いまなお日本美術史上最多の入場者数だそうです。

日本人の生活にいくらかゆとりができたのか、秘蔵の美術工芸品に専門家が価格をつける人気テレビ番組のせいなのか、一流の美術作品・工芸品を間近に見たいという人が増えています

昨年5月28日から40日間の会期で、千葉市中央区の県立美術館で開催された山下清展には6万余人もの入場者が訪れました。そのおかげもあって、昨年度の県立美術館・博物館8館の総入場者は約110万8千人にのぼり、有料化した2004年度以降、過去最多を記録しました。

ところで、世界の美術館・博物館で最も多くの来館者が訪れるのは芸術の都フランス・パリのルーヴル美術館だそうです。2011年には888万人が訪れてモナリザと対面しました。2位はアメリカ・ニューヨークのメトロポリタン美術館、3位にイギリス・ロンドンの大英博物館、4位と5位もイギリスで、ナショナル・ギャラリー、テート・モダンと続きます。

驚くのはこの5館の入場がいずれも無料だということです(ルーヴル美術館は毎月第一日曜日に無料開放、メトロポリタン美術館は原則無料で、入場者は美術館に自分の好きな金額を寄付)。美術館・博物館に収められている美術品は国民の財産という意識が徹底しているのでしょう。

一流の画家、作家の作品はもちろん素晴らしいのですが、県民の作品を鑑賞するのも楽しいものです。第64回県展が県立美術館で開かれています(前期14日まで、後期は18日から28日まで)。一般公募の入選作品1569点はいずれも渾身の作品ぞろい。秋の1日、県民の力作を鑑賞しに出かけてはいかがでしょうか。