伊藤まさひろ世事感懐

放射能の不安、一刻も早く払しょくを

東日本大震災発生で福島第一原子力発電所が損壊してから3カ月が経ったが、事故収束はさしたる進展を見せず、風に乗って放射能のちりが飛んでくる地域の人々の不安は日増しに増大しています。

市原市の千葉県環境研究センターで計測された6月末の大気中の放射能量は0.04~0.05ミリシーベルトの間でした。昨年の通常値が0.022~0.044ミリシーベルトだったので、若干多めですが、ほぼ通常値で推移していました。しかしながら、県北西部の柏市では県環境センターが計測した放射能量より高い値が計測されたとの報告もありました。

夏の暑い日差しが照りつけ、各地のプールがにぎわうようになりました。それとともに、プールの水の放射能という新たな心配の種も生じています。松戸市、船橋市、市川市に水道水を供給するちば野菊の里浄水場と栗山浄水場で、かつて水道水から乳児向けの指標を上回る放射能値が検出されたこともあり、プールも測定の対象にされるようになりました。

これまでのところ、人体に影響があるほどの放射能値は検出されていないようです。それでも、「放射能のちりを含んだ雨水が流入したら…」「プールの水を誤って飲んでしまったら…」などと、お子さんを持つ親の心配は尽きません。放射能の影響は大人より子どものほうが大きいという説もあり、公園など、子どもが遊ぶ場所の放射能測定を独自に行う住民グループもあります。

千葉県産のホウレンソウ、シュンギクなどから一時、暫定基準値を超える放射能値が検出されたこともあり、食の安全も心配です。米ソやインド、中国などが盛んに核実験を行っていた1960年代の大気中の放射能は、正常値の1000倍もあったという話をする人もいますが、現在の不安な状況を紛らわすすべにはなりません。何とか、福島第一原発の封じ込めを急いでほしいというのが住民の心からの願いでしょう。

細野原発担当大臣は、水素爆発がないという状況が確実に分かった場合に、戻ってもらえる人には戻ってもらうことができるのではないかと述べ、東電の工程表で定めた事故収束の第1ステップである7月17日以降に避難区域縮小を検討していることを明らかにしました。しかし、今月初め時点での現状はと言うと、汚染水の循環再利用がやっと実現したばかりです。それも運転開始直後の水漏れなどでごたごたした末にようやくです。

スムーズに、工程表通りの事故収束ができるとはとても思えませんが、一刻も早くというのが国民の心情です。なんとか、震災以前の平和な日本を早く取り戻してほしいものです。