伊藤まさひろ世事感懐

就職難は国難

回復の歩みがのろい景気を反映して、就職難の時代が続いています。総務省が先月末に発表した労働力調査によると、10月の完全失業率(季節調整値)は5.1%となり、前月に比べて0.1ポイント悪化しました。昨年7月に過去最悪の5.6%を記録した完全失業率ですが、今年初めに4%台になった以外は5%台で高止まりしています。

一方、厚生労働省発表の10月の有効求人倍率は0.56倍となり、6カ月連続して改善したそうです。とは言うものの、職を求める人の半数分しか、企業からの求人がないと言う状況は、やはり異常な就職難と言うしかありません。

就職難の時代に注目されるのが、大学生、高校生の就職内定率です。文部科学、厚生労働両省の調査によると、来春卒業予定の大学生の就職内定率は10月1日現在で57.6%ということです。氷河期と言われた前年同期に比べて4.9%下がっており、過去最低の数字となっています。高校生の就職内定率も振るわず、9月末現在で就職を希望する高校生の40.6%しか職が決まっていません。これは調査を始めた1987年以降で6番目に低い数字です。

若者の社会への船出を阻害するこの就職難は、国難と言ってもいいほど大変なことです。ある日、突然に職を失った人の再就職と併せ、国、政府が懸命になって取り組むべきです。それがどうでしょうか。行政刷新会議による事業仕分けで、正社員登用を促進する「ジョブカード制度」廃止を決定したと思ったら、一転して政府は継続を決めました。まったくちぐはぐな対応です。

そもそも政府は、この就職難を引き起こした景気低迷に対しても実効ある対策を打ち出せないままになっています。円高をけん制する財務相の口先介入は、ファンドに馬鹿にされて効き目がなく、挙句は「この不景気は自民党政権の時代になったものだ」といったボヤキまで聞こえる始末です。景気対策は前回選挙の大きな争点だったはずです。何をか言わんやです。

速やかな景気回復が期待できない今、少なくとも県内の雇用情勢だけでもなんとかしなければなりません。県ができることもたくさんあります。実効性ある施策を県当局に要望していきたいと思います。