伊藤まさひろ世事感懐

「千産千消」から「千産全消」へ

「千産千消」と言う言葉をご存知でしょうか。「千葉県産の農産物や千葉の海で獲れた魚を食べましょう」と県民に呼びかける言葉です。土地のものを食すと言う意味の「地産地消」という言葉の「地」を千葉の「千」に置き換えて、千葉県の農水産業振興のために造語されました。

県の音頭取りで打ち出されてから、久しいのですが、森田知事が店頭でトップセールスを行なうなどの運動推進のお陰で、徐々に盛り上がりを見せているようです。

この春には、県内七つのホテルのシェフが船橋市のホテルに集合し、千葉県産の食材を使った料理を披露する「千産千消丸ごとグルメパーティー」が開かれました。一流ホテルのシェフが腕によりをかけて作った料理とあって、点数を付けるお客様も迷いに迷うほど、いずれも素晴らしい味だったそうです。

今年初めに県と「地域振興・地域貢献に関する包括協定」を締結した東急ストアは、県内店舗で積極的に「千産千消フェア」を開催、新鮮な千葉県産の野菜や魚介、名産品を販売し、「千産千消」運動を盛り上げました。

もちろん、学校給食の現場でも取り組まれています。「千産千消デー」を設けて、その日は地場産物を使用する試みが昨年度から行なわれています。千葉の海で採れたヒジキを使ったヒジキご飯や県産のサツマイモやニンジン、ダイコンが入ったさつま汁などが献立に並びます。

千葉県の農業は、北海道に次いで第2位の生産額を誇っています。半島の三方を囲む海からは様々な海産物が水揚げされます。しかしながら、輸送網の発達で、産地間の競争は激しくなるばかりです。このような状況にあって、千葉県の農業や漁業を盛り立てるためにも、販売のてこ入れがぜひとも必要です。その一助として「千産千消」の呼びかけがされてきました。

「千産千消」の運動にも、問題点や課題があります。消費者が手に取って買い物カゴに入れるにはやはり、全国各地の産品より美味しくなければなりません。価格も考慮されます。地場産品を使って商品化しようというメーカーにとっては、供給量が少なく、品質が安定しない物もあるのが悩みの種です。

この根本的な課題を解決してこそ、「千産千消」運動は一層の広がりをみせ、千葉産品が全国で消費される「千産全消」につながることでしょう。